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羅生門 / 芥川龍之介

冒頭文

「ある日の暮方(くれがた)の事である。一人の下人(げにん)が、羅生門(らしょうもん)の下で雨(あめ)やみを待っていた。」

“It was a late afternoon. A servant was waiting for the rain to stop under the Rashomon Gate.”

一言で言うと?

極限状態に置かれた人間が、生存のために「悪」を正当化していく過程を、冷徹な筆致で描き出した物語。

A story that coldly depicts the process by which a human being, placed in extreme circumstances, justifies “evil” for the sake of survival.

主な登場人物

名前役割性格・特徴主人公との関係
下人(げにん)主人公職を失い、飢え死にするか盗人になるか迷っている。老婆の行動を見て、ある決断を下す。
老婆(ろうば)死体の髪を抜く女髪を抜く行為を「生きるための仕方のないこと」と正当化する。下人に「生きるための悪」の論理を教える。

【ざっくりわかる】120文字要約

荒廃した京都。羅生門の下で途方に暮れる下人は、死人の髪を抜く老婆に出会う。「生きるための悪」を正当化する彼女の言葉を聞き、下人の心にある変化が起きる。道徳と生存の狭間で揺れる人間のエゴイズムを鋭く描いた、芥川龍之介の初期の傑作。

【じっくりわかる】400文字要約

舞台は平安時代末期、災害や飢饉で荒れ果てた京都。主人に解雇された一人の下人が、行き場を失い、雨を避けて羅生門の下にいた。彼は「このまま飢え死にするか、盗人になるか」という問いに答えを出せずにいた。

夜になり、火の気配を感じて門の上層へ登ると、そこには打ち捨てられた死体の髪を一本一本引き抜く老婆の姿があった。その不気味な光景に激しい正義感を燃やした下人は、老婆を捕らえ厳しく問い詰める。老婆は「抜いた髪でカツラを作って売るのだ。この死んだ女も、生前は蛇を魚と偽って売っており、生きるために仕方のないことだった」と平然と言い放つ。

その「生きるためには悪もやむなし」という極限の論理を聞いた瞬間、下人の迷いは消える。彼は「ならば自分がこうするのも恨むまいな」と言い捨て、老婆の着物を剥ぎ取ると、一目散に夜の闇の中へ消えていった。

English Summary

In the decaying capital of Kyoto, a masterless servant takes refuge under the Rashomon Gate to escape the rain. Struggling with the choice between starving and becoming a thief, he discovers an old woman plucking hair from corpses. She justifies her actions as a means of survival. Inspired by her cold logic, the servant abandons his morality, robs the woman of her robe, and disappears into the night, choosing the path of a thief.

時代背景

世紀末の閉塞感と古典の再構築

  • 社会情勢と出来事: 発表された1915年(大正4年)は、第一次世界大戦の最中であり、日本社会にも近代化の歪みや不安が広がっていた時期である。芥川は平安末期の衰退した社会を借りて、現代にも通じる人間の「利己主義(エゴイズム)」を浮き彫りにした。
  • 思想的背景: 平安時代の説話集『今昔物語集』を題材にしている。古典の世界に、当時流入していた西洋的な「エゴイズム」の概念や、芥川自身の厭世的な視点を融合させた「新理知主義」の代表作とされる。
  • 文学史上の位置づけ: 当時まだ23歳だった芥川のデビュー直後の作品。それまでの自然主義文学(ありのままを描く)への反発として、技巧的で理知的な構成を目指した。後に黒澤明監督によって映画化(『羅生門』)され、世界的にその名が知られることとなった。

テーマ・読解のポイント

根本テーマ

「正義」の脆さ。他人の悪を許さない「正義」を持っていたはずの下人が、自分を正当化する理由を見つけた途端、一瞬にして「悪」に染まる皮肉。

受験ポイント

  • 下人の心の動き(正義感から悪への反転)のターニングポイント
  • 羅生門の荒廃した描写が、下人の内面をどう象徴しているか
  • 「先生」がなぜ明治の終焉(乃木将軍の殉死)と共に死を選んだのか

印象的な象徴

  • 雨(絶望と足止め): 下人が「どうしようもない状況」に追い込まれていることの象徴。この雨のせいで門から動けず、彼は悪へと踏み出す決断を迫られる。
  • 右頬の大きなニキビ(若さと人間味): 悪に染まりきっていない未熟な人間らしさの象徴。老婆を襲う際、これを意識しなくなることは「なりふり構わぬ悪への転落」を意味する。
  • 羅生門(境界線):生と死、道徳と非道、そして人間が「盗人」へと変貌する一線(境界)の象徴。

身近な視点で考えると?

生きるために、どこまで妥協するか——。理想と現実の狭間で、倫理観が揺らぐ瞬間は誰にでもある。「本当はこうすべき」と分かっていても、仕方なく選択する場面。進路選択で理想と現実に悩んだり、日常の小さなズルを正当化してしまったり。下人が盗みを正当化していく心理は、人間の弱さと、それでも生きていかなければならない現実を、冷徹に描き出している。

受験・採用データ

『山月記』と並び、高校国語教科書の定番。ほぼ全ての出版社が採用。センター試験(現・共通テスト)や私立大・国公立大の入試問題としても非常に多く採用されている。

この作品を読む


紙の本を手元に置きたい方へ

羅生門・鼻 文庫 – 新潮社:改版 2005/10/1

*羅生門、鼻、芋粥、運、袈裟と盛遠、邪宗門、好色、俊寛 を収録

地獄変・羅生門・藪の中 (マンガでBUNGAKU)  – 三栄書房:2018/8/24

*物足りないとのレビューもあるが、活字へのハードルが高い方への入り口に。

羅生門 (まんがで読破) Kindle版  – Teamバンミカス:2021/4/5

*現在はKindle版のみ販売中。(2026/01/30)
*偸盗、藪の中 も収録

YouTube情報 (参考情報)

芥川龍之介「羅生門」 ー元アナウンサー・古沢久美子の ◆朗読の時間◆

*淡々としていてとても聞きやすいです。

  1. https://www.youtube.com/watch?v=oXo7Qdy22lY

羅生門【言語文化・現代の国語】芥川龍之介〈教科書あらすじ&解説&漢字〉 ー 岡崎健太のOK塾

*あらすじと共に考え方の解説もしてくれて、考えるきっかけを与えてくれます。

  1. https://www.youtube.com/watch?v=1Xyw8BuBUCM

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